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役員報酬で年間300万円損してない?中小企業の正しい決め方を経理のプロが解説

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役員報酬で年間300万円損してない?中小企業の正しい決め方

役員報酬で年間300万円損してない?中小企業の正しい決め方

2025/09/13

はじめに:役員報酬の悩み、実は皆さん同じです
 

「役員報酬、今の金額で本当にいいのだろうか…」

中小企業の社長さんとお話しすると、必ずと言っていいほど出てくる悩みです。

税理士さんに「もう少し下げた方が節税になりますよ」と言われたけど、子どもの教育費もあるし、住宅ローンもある。かといって、高すぎると会社の資金繰りが心配。

他社の社長さんがいくらもらっているのか気になるけど、なかなか聞けない…そんなモヤモヤを抱えていませんか?

私は27年間、中小企業の経理部長として数多くの会社を見てきました。その経験から断言できることがあります。

役員報酬の決め方次第で、年間300万円以上、手元に残るお金が変わることがあるのです。

これは大げさな話ではありません。税金、社会保険料、そして会社の資金繰り。この3つのバランスを考えずに役員報酬を決めてしまうと、知らないうちに大きな損をしている可能性があります。

今日は、私の実務経験をもとに、中小企業の社長さんが「納得できる」役員報酬の決め方を、できるだけ分かりやすくお伝えしていきます。
 

なぜ多くの社長が役員報酬で失敗するのか
 

どんぶり勘定が招く3つの損失

先日、ある製造業の社長さん(仮にA社長としましょう)から相談を受けました。

「檜和田さん、うちの会社、利益は出ているはずなのに、なぜかお金が残らないんです…」

詳しく聞いてみると、A社長は役員報酬を「なんとなく月100万円」に設定していました。理由を聞くと「キリがいいから」とのこと。

実はこれ、多くの中小企業で起きている「どんぶり勘定」の典型例なんです。

役員報酬を適当に決めてしまうと、次の3つの視点でお金を失います。

1. 税金の視点 法人税と所得税のバランスが悪く、トータルの税負担が増える

2. 社会保険料の視点 必要以上に高い保険料を払い続けることになる

3. 資金繰りの視点 毎月の固定費が重くのしかかり、会社の成長投資ができなくなる

A社長の場合、詳しく計算してみると、役員報酬を月額75万円に変更することで、年間の税金と社会保険料の合計が180万円も削減できることが分かりました。

さらに、会社の資金繰りも改善し、新しい設備投資の資金も確保できるようになったのです。

「もっと早く知っていれば…」とA社長。

でも、大丈夫です。今からでも遅くありません。
 

役員報酬を決める5つのステップ
 

それでは、具体的にどうやって役員報酬を決めればいいのか、5つのステップで解説していきます。
 

ステップ1:今期の利益予測から始めよう

「利益予測なんて難しそう…」

そう思われるかもしれませんが、実はシンプルです。

まず、去年の決算書を用意してください。そして、以下の3つの数字を確認します。

  1. 売上高
  2. 売上総利益(粗利)
  3. 営業利益

次に、今年の状況を考えます。

  • 売上は去年より増えそう?減りそう?何%くらい?
  • 新しい取引先は増えた?
  • 大口の案件はある?

私がいつも社長さんにお勧めしているのは、「保守的に見積もる」ことです。

例えば、去年の売上が5,000万円で、今年は「たぶん10%は増えるかな」と思っても、予測は5%増の5,250万円にしておく。これが安全な経営につながります。

利益予測の簡単な計算式:

予想売上高 × 去年の利益率 = 今期の予想利益

仮に、去年の営業利益率が10%だったら、5,250万円 × 10% = 525万円が今期の予想営業利益です。

この数字が、役員報酬を決める「土台」になります。

なぜなら、役員報酬は営業利益から支払われるものだからです。利益が500万円しかないのに、役員報酬を年間1,200万円に設定したら、会社は赤字になってしまいますよね。
 

ステップ2:税金のスイートスポットを見つける

ここが一番のポイントです。

法人税と所得税、この2つのバランスを取ることで、トータルの税負担を最小限にできます。

まず、基本的な税率を確認しましょう(2024年現在)。

法人税率(中小企業の場合):

  • 年間所得800万円以下:約23%
  • 年間所得800万円超:約34%

所得税率(給与所得の場合):

  • 年収500万円:実効税率約10%
  • 年収800万円:実効税率約15%
  • 年収1,200万円:実効税率約25%

ここで注目すべきは「800万円」という数字です。

法人の所得が800万円を超えると、税率が一気に上がります。一方、個人の所得税は段階的に上がっていきます。

私の経験則では、会社の利益を800万円以下に抑えつつ、役員報酬は年収900万円〜1,200万円程度に設定するのが、多くの中小企業にとってバランスが良いことが多いです。

具体例で見てみましょう:

B社(卸売業)の場合

  • 役員報酬を引く前の利益:2,000万円

【パターン1】役員報酬600万円に設定

  • 法人の利益:1,400万円
  • 法人税:約410万円
  • 所得税・住民税:約70万円
  • 社会保険料(会社+個人):約170万円
  • 合計負担:650万円

【パターン2】役員報酬1,200万円に設定

  • 法人の利益:800万円
  • 法人税:約184万円
  • 所得税・住民税:約250万円
  • 社会保険料(会社+個人):約180万円
  • 合計負担:614万円

この例では、パターン2の方が年間36万円も得することになります。

ただし、これはあくまで一例です。家族構成や他の所得によっても変わってきますので、必ず個別にシミュレーションすることが大切です。
 

ステップ3:資金繰りへの影響を必ずチェック

「税金が安くなるなら、役員報酬は高い方がいいのか」

ちょっと待ってください。ここで忘れてはいけないのが、資金繰りへの影響です。

役員報酬は毎月の固定費です。一度決めたら、原則1年間は変更できません。

私が見てきた失敗例をご紹介します。

C社(飲食業)の社長は、節税を重視して役員報酬を月額150万円に設定しました。しかし、コロナ禍で売上が激減。役員報酬の支払いが重くのしかかり、運転資金が底をつきそうになりました。

「役員報酬を下げたい」と思っても、期中での減額は税務上のペナルティがあるため、簡単にはできません。結局、銀行から緊急融資を受けることになってしまいました。

資金繰りの安全ラインは「運転資金の3ヶ月分」

私がいつも社長さんに伝えているのは、「何があっても3ヶ月は持ちこたえられる現預金を確保する」ということです。

計算方法は簡単です。

月間固定費(家賃、人件費、その他経費)× 3ヶ月分

仮に月間固定費が500万円なら、1,500万円の現預金は常に確保しておきたいところです。

役員報酬を設定する際は、この安全ラインを割らないかどうか、必ずシミュレーションしてください。
 

ステップ4:同業他社と比較して妥当性をチェック

「うちの役員報酬、高すぎないかな…」

税務調査で最も指摘されやすいのが、「不相当に高額な役員報酬」です。

でも、「不相当に高額」って、具体的にいくらなのでしょうか?

実は、明確な基準はありません。業種、規模、利益状況などを総合的に判断されます。

ただ、目安となるデータはあります。日本政策金融公庫の調査によると、中小企業の役員報酬の相場は以下の通りです(2023年データを基に作成)。
 

売上規模別の役員報酬相場:

【売上1億円未満】

  • 製造業:年収600万円〜800万円
  • 卸売業:年収500万円〜700万円
  • 小売業:年収400万円〜600万円
  • サービス業:年収500万円〜700万円

【売上1億円〜3億円】

  • 製造業:年収800万円〜1,200万円
  • 卸売業:年収700万円〜1,000万円
  • 小売業:年収600万円〜900万円
  • サービス業:年収700万円〜1,100万円

【売上3億円〜5億円】

  • 製造業:年収1,200万円〜1,800万円
  • 卸売業:年収1,000万円〜1,500万円
  • 小売業:年収900万円〜1,300万円
  • サービス業:年収1,100万円〜1,600万円
     

これらはあくまで「相場」です。利益率が高い会社なら、相場より高くても問題ありません。

私が税務調査の立ち会いで見てきた経験では、「売上の3%以内」かつ「営業利益の50%以内」であれば、まず問題になることはありません。

ただし、赤字なのに高額な役員報酬を取っている場合は要注意です。税務署から「なぜ赤字なのに高額な報酬を?」と聞かれた時に、合理的な説明ができる必要があります。
 

ステップ5:正式な手続きを忘れずに(株主総会議事録)

「金額が決まったら、それでOK?」

いえいえ、最後の詰めが大切です。正式な手続きを踏まないと、税務調査で否認されるリスクがあります。

役員報酬を決定・変更する際は、必ず「株主総会議事録」を作成してください。

「一人会社だから、議事録なんて…」と思われるかもしれませんが、税務調査では必ずチェックされる書類です。

議事録に記載すべき内容:

  1. 開催日時・場所
  2. 出席者(株主、取締役)
  3. 議事の内容
    • 役員報酬の金額
    • 支給時期(毎月○日など)
    • 適用開始時期
  4. 決議結果

以下、シンプルな議事録の例を示します。


臨時株主総会議事録

日時:令和○年○月○日 午前10時 場所:当社会議室 出席者:株主兼代表取締役 ○○○○(持株数100株)

議題:取締役の報酬について

議事: 代表取締役より、当社の業績および今後の見通しを踏まえ、令和○年○月より、取締役○○○○の月額報酬を○○万円とする提案がなされた。

審議の結果、全員一致で承認可決された。

以上により、本日の議事を終了し、午前10時30分に閉会した。

令和○年○月○日 株式会社○○○○ 代表取締役 ○○○○ 印

この議事録は、決算期末から3ヶ月以内に作成し、税務署に提出する必要がある場合もあります(事前確定届出給与の場合)。
 

よくある落とし穴と対策

27年の経験から、社長さんがつまずきやすいポイントをまとめました。
 

1. 期中での安易な変更は命取り

「業績が良いから、今月から役員報酬を上げよう!」

これ、絶対にNGです。

役員報酬は「定期同額給与」が原則。期中での増額は、増額分が損金(経費)として認められません。つまり、法人税の対象になってしまうのです。

例外として認められるのは:

  • 役員の職務内容の大幅な変更
  • 経営状況の著しい悪化(減額のみ)

「著しい悪化」とは、このままでは倒産の危機、というレベルです。「ちょっと業績が悪いから」では認められません。
 

2. 賞与との組み合わせは慎重に

「毎月の報酬は低めにして、決算賞与で調整すればいいのでは?」

残念ながら、役員賞与は原則として損金になりません。

ただし、「事前確定届出給与」として、事前に税務署に届け出れば損金にできます。しかし、これには厳格なルールがあります。

  • 届出通りの金額を、届出通りの日に支払う
  • 1円でも違えばアウト
  • 支払いが1日でも遅れたらアウト

正直、中小企業にはハードルが高いです。私は、よほどの事情がない限り、定期同額給与一本でいくことをお勧めしています。
 

3. 家族役員の報酬設定

「妻を役員にして、報酬を分散すれば節税になる」

確かに所得分散による節税効果はあります。しかし、注意点があります。

  • 実際に仕事をしていることが大前提
  • 勤務実態に見合った金額であること
  • 非常勤なのに高額報酬は危険

税務調査では、家族役員の勤務実態を細かくチェックされます。出勤簿、業務日報などの証拠を残しておくことが大切です。
 

4. 赤字でも役員報酬を下げない理由

「赤字なんだから、役員報酬はゼロにすべきでは?」

実は、これも要注意です。

社長の生活費も必要ですし、急に報酬をゼロにすると、逆に税務署から「利益調整ではないか」と疑われることがあります。

また、社会保険の等級が下がると、将来の年金額にも影響します。一時的な赤字なら、役員報酬は維持して、他の経費削減を優先する方が賢明なことが多いのです。
 

まとめ:今すぐできる第一歩
 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

役員報酬の決定は、確かに複雑です。でも、適切に設定すれば、年間で数百万円の差が生まれることもあります。

まず、今すぐできることから始めてみましょう。
 

チェックリスト:
□ 現在の役員報酬額を確認
□ 直近の決算書で利益を確認
□ 今期の利益予測を立てる
□ 税金・社会保険料のシミュレーション
□ 資金繰り表の作成
□ 同業他社との比較
□ 株主総会議事録の整備

特に重要なのは、来期の役員報酬を検討するタイミングです。

決算月の2ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。3月決算なら1月から、12月決算なら10月から検討を始めましょう。

「でも、一人で全部やるのは不安…」

そんな時は、専門家に相談することも大切です。税理士さんはもちろん、資金繰りの専門家に相談することで、より総合的な判断ができます。
 

最後に
 

役員報酬の決定は、単なる節税対策ではありません。

会社の成長戦略、社長自身のライフプラン、そして従業員への責任。すべてのバランスを取りながら、最適な答えを見つける必要があります。

私が27年間の経理経験で学んだことは、「正解は一つではない」ということです。

大切なのは、自社の状況を正確に把握し、将来を見据えて、納得のいく決定をすること。

この記事が、そのための第一歩になれば幸いです。

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筆者プロフィール

檜和田知之(ひわだ ともゆき)

27年間の経理・業務改善経験を持つ、中小企業の資金繰りのプロ。大手企業から中小企業まで、幅広い規模の会社で経理部長を歴任。「経理は会社の心臓部」という信念のもと、単なる数字の処理ではなく、経営者の参謀として企業の成長を支援。特に、資金繰り改善と業務効率化を得意とし、これまでに50社以上の中小企業の財務改善に貢献。
 

出典・参考資料

  • 国税庁「タックスアンサー No.5211 役員に対する給与」
  • 日本政策金融公庫「中小企業の経営指標調査」(2023年度版)
  • 中小企業庁「中小企業白書」(2023年版)
  • 東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」
  • 厚生労働省「社会保険料額表」(令和6年度版)
     

※本記事の事例はプライバシー保護のため、実際の事例を基に再構成した架空のものです。

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