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「親父は…」で進まない事業計画。親族を説得する3つの数字

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「親父は…」で進まない事業計画。親族を説得する3つの数字

「親父は…」で進まない事業計画。親族を説得する3つの数字

2025/08/28

「親父は…」の一言で思考停止。その事業計画、親族に想いが届かない根本的な理由

 

「親父の代から続くこの会社を、俺の代で潰すわけにはいかん… 」

 

広島で会社を継いだ二代目社長なら、誰もが一度は、いや、毎日その重圧と向き合っているのではないでしょうか。

こんにちは。広島・呉の中小企業の資金繰り改善パートナー、ワイズビズサポートナビ代表の檜和田知之です。私自身、27年間、経理部長や管理部長として様々な中小企業の現場を見てきました。その中で、多くの二代目社長が同じ壁にぶつかる瞬間を目の当たりにしてきました。

それは、会社の未来を想い、勇気を振り絞って新しい事業計画を提案した時。

「先代はそんなこと言わなかったぞ」

「昔からのやり方で、今までやってこれたんじゃ」

「また若造が、夢みたいなことばかり言うて…」

古参の社員や親族、そして偉大な創業者である先代社長から、こんな言葉を投げかけられて、悔しい思いをしたことはありませんか?

 

あなたの情熱や、必死で集めた情報が、なぜ届かないのか。

その根本的な原因は、能力や熱意の差ではありません。

ただ一つ、あなたの「未来への情熱」と、先代の「過去からの経験則」とをつなぐ「共通言語」が存在しないからです。

 

しかし、ご安心ください。そのすれ違いは、あるたった一つのもので解決できます。

それは「数字」です。

立派な事業計画書をいきなり「書く」のではありません。その前に、たった3つの数字を準備して対話のテーブルに乗せるだけで、状況は一変します。今まであなたの計画に否定的だった親族が、最も頼もしい応援団に変わるのです。

この記事では、私が27年の現場経験で培った 、そのための具体的なステップを、包み隠さずお伝えします。

 

なぜ、あなたの想いは「また若造が…」と一蹴されてしまうのか?

 

そもそも、なぜ二代目社長と先代の議論はこうもすれ違ってしまうのでしょうか。

それは、議論の土台が「感情論 vs 経験則」という、決して交わることのない不毛な戦いになっているからです。

  • 二代目の武器:「こうしたい!」「このままでは時代遅れになる!」という未来への想い(感情論)

  • 先代の武器:「わしらの時代はこうやって成功した」「長年の勘がそう言っている」という過去からの実績(経験則)

二代目の想いは、具体的な根拠がなければ、先代には「夢物語」に聞こえてしまいます。一方、先代が守ってきた経験則は、今の時代に合わないと頭では分かっていても、会社をゼロから築き上げてきた自負があるため、簡単には譲れません。

これでは、お互いのプライドがぶつかり合うだけで、会社の未来にとって何のプラスにもなりませんよね。

 

「数字」だけが、唯一の客観的共通言になる

 

そこで必要になるのが、個人の感情や経験といった主観を挟む余地のない、客観的な「事実」。それこそが「数字」です。

会社の決算書に並んだ数字は、良い時も悪い時も含めて、先代が死に物狂いで築き上げてきた歴史そのものです。これは誰も否定しようのない事実であり、最大の敬意を払うべきものです。

この「事実」という土台の上に立って初めて、私たちは過去への敬意と、未来への挑戦を両立させた、建設的な対話を始めることができるのです。

 

私の苦い失敗談:正論だけでは、会社は1ミリも動かない

 

偉そうなことを言っていますが、何を隠そう、私自身が過去に手痛い失敗をしています 。

ある製造現場でコスト削減のために新しい管理システムを導入しようとした時のことです。数字の上では完璧な、誰が見ても「正しい」計画でした。しかし、現場のベテラン職長に提案した途端、彼は書類を突き返してこう言ったのです。

 

「こんな面倒なこと、やってられるか!机の上で数字ばっかり見とるあんたに、現場の何が分かるんか!」

頭をガツンと殴られたような衝撃でした。あの時の悔しさと無力感が、「机上の空論では会社は1ミリも動かない」という、今の私の信念の原点です 6

「正しさ」だけを振りかざしても、人の心は動きません。特に、長い歴史と文化を持つ中小企業ではなおさらです。相手への敬意を具体的な形で示して初めて、人はこちらの話に耳を傾けてくれる。

事業承継における「数字」は、まさに先代への敬意を示すための最高のツールなのです。

 

親族を最強の味方にする「事業計画の準備」3ステップ

 

お待たせしました。それでは、ここから具体的なステップに入っていきましょう。

ポイントは、いきなり未来の話をしないこと。「過去」→「現在」→「未来」の順番で、丁寧に数字を共有していくことです。

 

ステップ1:【リスペクトの数字】で対話の土台を作る

 

新しいことを始める前に、まずやるべきは、先代が成し遂げてきたことの偉大さを、客観的な数字で承認し、伝えることです。

■具体的なアクション

過去10年分ほどの決算書を用意し、「労働生産性」を計算してみてください。

労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数

※付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

難しく考える必要はありません。「従業員一人が、一年間でどれだけの儲け(付加価値)を生み出したか」を示す指標です。

これを年ごとに計算して、簡単なグラフにしてみましょう。そして、それを持って先代にこう切り出すのです。

「親父、ちょっと見てくれんか。うちの会社の昔の数字を調べてみたんじゃけど、あのオイルショックの後でも、バブルが弾けた後でも、従業員一人あたりこれだけの利益を出しとったんじゃな。本当にすごいことよ、これは」

 

自分の功績を、息子が具体的な数字で認めてくれた。それがどれだけ嬉しいことか、想像に難くありません。頭ごなしに自分のやり方を否定されるのではなく、まずは敬意を示されることで、先代も「こいつの言うことも、少しは聞いてみるか」という気持ちになるのです。

 

【事例:呉市の食品加工会社A社(架空)】

新商品の開発と販路拡大を訴えるも、先代である父親から「今のままで十分だ」と反対されていたA社長。ある時、檜和田のアドバイスで過去の労働生産性をグラフ化して父親に見せました。すると、いつもは息子の意見に否定的だった父親が「わしらの時代も、なかなか頑張っとったんじゃな…」と目を細め、その日初めて、A社長が考えている新商品開発の構想に、真剣に耳を傾けてくれたそうです。

 

ステップ2:【危機感の数字】で共通の敵を作る

 

対話の土台ができたら、次に「現在」の問題点を共有します。ただし、ここでも「親父のやり方は古い!」と批判してはいけません。

「このまま行くと、俺たちの会社はまずいことになるかもしれない」という危機感を共有し、共通の敵を作るのです。

 

■具体的なアクション

現在の費用構造を基に「損益分岐点売上高」を計算します。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費 ÷ 売上高)

これもシンプルに言えば、「最低限、これだけ売り上げないと会社が赤字になってしまう」というラインのことです。そして、先代にこう伝えます。

「親父のやり方のおかげで、今の会社がある。それは本当に感謝しとる。じゃけど、見てくれんか。最近は原材料費もどんどん上がっとるし、このままもし売上が10%下がったら、うちはもう赤字になってしまうんよ」

 

ポイントは、「敵は親父のやり方ではなく、原材料の高騰や市場の変化といった、会社の外にある時代の変化なんだ」という構図を明確にすることです。

「どうすれば、この時代の変化という敵に、親子で一緒に立ち向かえるか?」という視点を提示できれば、先代もあなたの「戦友」として、真剣に解決策を考えてくれるようになります。

 

【事例:広島市の建設会社B社(架空)】

B社長は、職人の高齢化に対応するため、新しい重機への設備投資を考えていました。しかし先代は「まだ使えるのにもったいない」と大反対。そこでB社長は、今後5年間の職人の人件費上昇をシミュレーションし、それによって損益分岐点がどれだけ上昇するかを提示。「このままじゃ、今までと同じ仕事量じゃ食っていけんようになるかもしれん」という客観的データを示したことで、先代もようやく危機感を共有。「…何か手を打たんといけんのぉ」と、設備投資の具体的な検討に協力的になりました。

 

ステップ3:【希望の数字】で未来への投資を語る

 

過去への敬意を示し、現在の危機感を共有できたら、いよいよあなたの出番です。あなたが描く「未来」の話をします。

ただし、ここでも情熱だけを語ってはいけません。あなたの挑戦が「単なる夢物語」ではなく、「きちんと儲かる、勝算のある話」であることを、数字で証明するのです。
 

■具体的なアクション

あなたが計画している新しい設備投資や新規事業について、「投資対効果(ROI)」をシンプルに示しましょう。

ROI(%) = (見込み利益 ÷ 投資額) × 100

 

例えば、このように説明します。

「俺がやりたいと思っとるネット通販事業じゃけど、ホームページ作成とか広告費とかで、初期投資に300万円かかると見込んどる。じゃけど、3年後には年間1000万円を売り上げて、300万円の利益を出す計画じゃ。つまり、投資したお金は3年で回収できる。これは夢物語じゃのうて、会社を成長させるための『投資』なんよ」

 

あなたの「やりたい!」という想いを、「儲かる」という具体的なソロバン勘定に翻訳してあげること。そうすれば、先代も一人の経営者として、その投資が妥当かどうかを判断することができます。

「若造の夢」が、「検討に値する事業案」に昇格する瞬間です。

 

【事例:食品卸売会社C社(架空)】

冷凍総菜のECサイト立ち上げを計画したC社長。親族会議では「ネットなんて危ない」「失敗したらどうするんだ」と反対意見が噴出しました。しかし、C社長が3年間の売上・利益計画と、5年後には事業全体の柱の一つになりうるというROI計画を提示したところ、場の空気が一変。「…お前の覚悟は分かった。ただし、3ヶ月に一回、必ず数字は報告しろよ」と、一番反対していた叔父が、最終的には一番の応援団になってくれました。

 

まとめ:事業計画とは、未来の対話の「脚本」である

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もうお分かりいただけたのではないでしょうか。

事業計画で最も大切なのは、分厚くて立派な計画書を「書くこと」ではありません。親族、特に先代と、会社の未来について真剣に**「対話すること」**です。

そして、その対話の潤滑油となり、あなたの想いを未来へと推し進めるエンジンとなるのが、

  1. 【リスペクトの数字】労働生産性

  2. 【危機感の数字】損益分岐点売上高

  3. 【希望の数字】投資対効果(ROI)

この3つの数字なのです。
 

さあ、まずはホコリをかぶった過去の決算書を引っ張り出してみませんか?そして、電卓を片手に「労働生産性」の計算から始めてみましょう。

それが、あなたの会社の未来を変える、小さくても、しかし、とてつもなく偉大な第一歩になるはずです。
 


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筆者プロフィール
 

檜和田 知之(ひわだ ともゆき)

ワイズビズサポートナビ 代表

広島の中小企業に27年間寄り添い、経理・業務改善を通じて資金繰りの課題を解決してきた専門家。税理士試験科目(財務諸表論)合格の知識と、7業種の現場で培った経験を武器に 、机上の空論ではない、社長の孤独に寄り添う「もう一人の右腕」として活動している 。中国新聞社運営の専門家紹介サイト「マイベストプロ」認定専門家 。

 

 

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