もう限界…関係を壊さず値上げを通す3つのうまい言い方
2025/08/26
【導入】「親父の代からの付き合いなのに…」値上げを言い出せない社長様へ
社長、今、一人でこんな悩みを抱え、眠れない夜を過ごしていませんか?
「原材料費も光熱費も、何もかもが上がる一方だ…」
「利益は出とるはずなのに、なぜか月末にはお金が残らん…」
「でも、親父の代から付き合いのある取引先に、今さら『値上げします』なんて、どう切り出せばええんじゃ…」
その気持ち、痛いほどよく分かります。
こんにちは。ワイズビズサポートナビ代表の檜和田知之と申します。何を隠そう、私自身も27年間、様々な中小企業の経理部長として、幾度となく社長と取引先との板挟みになってきました。「会社の未来のためには値上げしかない。でも、どう伝えれば…」と頭を抱えた夜は数え切れません。
偉大な先代が築き上げた会社と、大切な取引先との信頼関係。その両方を守らなければならないプレッシャーは、経験した者にしか分からない孤独な闘いです。
しかし、社長、もう一人で抱え込む必要はありません。
実は、値上げ交渉は「言い方」だけを気にするから失敗するのです。成功の9割は「正しい準備」と「伝える順番」で決まります。
この記事では、私が27年の現場で培ってきた、取引先との関係を壊すことなく、むしろ今以上に信頼される「値上げ交渉の全技術」を、余すところなくお伝えします。
この記事を読み終える頃には、あなたの心にあった不安の霧は晴れ、自信を持って交渉の席に着けるようになっているはずです。
【第1章】なぜ、私たちは「値上げ」を言い出せないのか?- 3つの心理的ブレーキ
交渉の具体的なテクニックに入る前に、まず、私たちの心の中にある「見えないブレーキ」の正体を知っておきましょう。なぜなら、敵の正体が分からなければ、対策のしようがないからです。
ブレーキ1:関係悪化への恐怖
これが最も大きなブレーキではないでしょうか。特に、先代から事業を引き継いだ二代目社長は、「親父が築いた信頼関係を、自分の代で壊すわけにはいかん」という想いが人一倍強いはずです。
取引先の担当者とゴルフに行ったり、家族ぐるみで付き合いがあったり…。そんな地方の中小企業ならではのウェットな人間関係が、ビジネスライクな決断を鈍らせます。「自分が『悪者』だと思われたくない」という気持ちも、重くのしかかりますよね。
ブレーキ2:交渉への自信のなさ
「よし、交渉するぞ!」と意気込んでも、「そもそも、どうやって説明すれば相手は納得してくれるんだろう…」という不安が頭をよぎりませんか?
「データで説明しても『先代はそんなこと言わなかった』と一蹴されたらどうしよう」
「他社と比較されて『お宅は高い』と言われたら、うまく切り返せるだろうか」
相手を論理的に説得できるだけの、明確な根拠と自信が持てない。これも、一歩を踏み出せない大きな原因です。
ブレーキ3:「まあ、まだ何とかなる」という現状維持バイアス
今すぐ会社が潰れるわけではない。今月の支払いは何とかなりそうだ。そう思うと、「わざわざ角が立つような交渉は、また今度にしよう…」と、つい問題を先送りにしてしまいがちです。
これは「現状維持バイアス」と呼ばれる、誰もが持つ心理的な傾向です。しかし、緩やかに会社の体力を奪っていくこの問題は、気づいた時には手遅れになっている、最も恐ろしいブレーキなのです。
社長、いかがでしょうか。一つでも当てはまるものがありましたか?
大丈夫です。これらのブレーキは、次の章でお話しする「正しい準備」によって、すべて綺麗に取り外すことができます。
【第2章】元経理部長が直伝!交渉の成功率を9割に高める「3つの数字の武器」
さあ、ここからが本題です。
値上げ交渉は、気合や根性、ましてや流暢なトーク術で乗り切るものではありません。勝負の9割は「準備」で決まります。
経理のプロとして断言しますが、交渉の場で最強の武器となるのは「誰の目にも明らかな、客観的な数字」です。感情論ではなく、事実に基づいた「数字の武器」を用意することで、交渉の主導権を握ることができます。
準備①:1円単位で語れる「原価計算シート」を作成する
「うちの原価?税理士さんから貰う決算書を見れば分かるよ」
そう思われた社長、要注意です。税理士さんが作成する決算書は、あくまで税金を正しく計算するための「過去の成績表」です。交渉の武器として使うには、情報が圧倒的に足りません。
交渉に必要なのは、「どの製品が、なぜ、いくら値上げする必要があるのか」を具体的に示すための、未来に向けたデータです。
具体的には、製品ごとに、
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材料費: どの材料が、いつから何%上がったのか?
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労務費: 最低賃金の上昇や社会保険料の負担増で、人件費はどれだけ上がったか?
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経費: 電気代やガソリン代、運送費はどれだけ上がったか?
これらを1円単位で算出し、「この製品の原価は半年前と比べて〇〇円上昇しており、現在の価格では利益が〇〇円しか出ていない(もしくは赤字である)」と、一目で分かるシートを作成しましょう。
これが、あなたの主張の「揺るぎない土台」となります。
準備②:相手のメリットを盛り込んだ「複数の選択肢」を用意する
人間は、「YESかNOか」の二択を迫られると、身構えてしまいます。そうではなく、相手に「選んでもらう」という状況を作るのが、交渉をスムーズに進めるコツです。
そのためには、単に「A商品を10%値上げします」という一つの案だけを提示するのではなく、複数の選択肢を用意しましょう。
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プランA: 商品価格を10%値上げする。その代わり、今後2年間は価格を据え置くことをお約束します。
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プランB: 商品価格は5%の値上げに留める。その代わり、年間の最低発注ロットを〇〇個に設定させてほしい。
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プランC: 商品価格は据え置く。その代わり、支払いサイトを60日から30日に短縮してほしい。
そして何より重要なのが、値上げを受け入れることが、相手にとってどんなメリットがあるのかを明確に伝えることです。
「今回の価格改定にご協力いただくことで、これまで通りの品質を維持し、今後も〇〇様へ商品を安定的に供給し続けることが可能になります。これは、私たちがパートナーとして果たせる最大の責任だと考えております」
このように伝えれば、相手も「自分たちのために必要な値上げなのだ」と、前向きに検討しやすくなります。
準備③:反論を想定した「交渉シナリオ」を準備する
行き当たりばったりの交渉は、裸で戦場に乗り込むようなものです。事前にリアルなシナリオを想定し、準備を重ねることで、心に余裕が生まれます。
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誰に?: 最初に話すのは、長年の付き合いがある現場の担当者か?それとも、決裁権を持つ部長や社長か?
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いつ?: 相手の繁忙期は避ける。契約更新の2ヶ月前など、余裕を持ったタイミングで切り出す。
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どうやって?: まずは電話でアポイントを取り、重要な話なので直接お会いして説明する、という丁寧な手順を踏む。
そして、必ず想定される反論と、それに対する切り返しトークを準備しておきましょう。
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反論1:「他社はもっと安い値段でやってくれるよ」
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切り返し: 「おっしゃる通り、価格だけを見れば弊社より安いところもあるかもしれません。しかし、私たちが〇〇様にご提供しているのは、単なる製品だけでなく、長年培ってきた信頼関係と、何かあった時にすぐ駆けつけるという安心感です。その価値も含めて、ご判断いただけると幸いです」
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反論2:「今まで通り、何とかならないの?」
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切り返し: 「私どもも、できることなら価格は据え置きたいと何度も検討を重ねました。しかし、このままでは品質を維持することが困難になり、結果として〇〇様にご迷惑をおかけしてしまいます。それは、誠に不本意なのです(ここで準備①の原価計算シートを見せる)」
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このように、あらゆる事態を想定して準備を尽くすこと。それが、交渉の成功率を9割にまで高める秘訣です。
【第3章】関係を壊さない!角が立たない「うまい言い方」実践フレーズ集
さて、いよいよ最終段階です。万全の準備を整えたら、あとは「伝え方」です。どんなに正論でも、伝え方一つで相手の受け取り方は180度変わります。ここでは、すぐに使える具体的なフレーズと会話の流れを見ていきましょう。
STEP1:切り出しは「お願い」ではなく「ご相談」で
いきなり「値上げのお願いです」と切り出すと、相手は身構えてしまいます。まずは、「相談したいことがある」というスタンスで、相手を尊重する姿勢を見せましょう。
【クッション言葉を活用する】
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「大変申し上げにくいのですが…」
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「誠に心苦しいお話ではございますが…」
【具体的なフレーズ】
「〇〇様、いつも大変お世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。実は、昨今の原材料費の高騰に関しまして、ぜひ〇〇様にご相談させていただきたい儀がございまして、近々少しだけお時間をいただくことは可能でしょうか」
STEP2:感謝と現状をセットで伝える
アポイントが取れたら、まずは今までの感謝を丁寧に伝えます。これは、相手への敬意を示すと同時に、本題に入る前の大事なウォーミングアップです。
「本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございます。平素より格別のご高配を賜り、心より御礼申し上げます。特に先代の頃より〇〇様には大変ご贔屓にしていただき…」
そして、感謝を伝えた後、準備してきた客観的な事実(数字)を冷静に伝えます。
「…本当に感謝しております。だからこそ、大変申し上げにくいのですが、実は今、このような状況になっておりまして…(ここで準備①の原価計算シートを提示する)。ご覧の通り、主原料である〇〇が昨年比で〇〇%高騰しており、弊社の企業努力だけでは、従来の価格を維持することが極めて困難な状況となっております」
STEP3:未来志向の提案で締めくくる
現状を説明した後は、相手へのメリットを改めて伝え、未来に向けた前向きな提案で締めくくります。
「私たちが最も避けたいのは、コスト削減のために品質を落とし、結果として〇〇様にご迷惑をおかけしてしまうことです。今回の価格改定にご同意いただくことで、今後も変わらぬ品質で、商品を安定的にお届けすることをお約束いたします」
「つきましては、大変恐縮ではございますが、こちらの3つのプランの中から、〇〇様のご状況に合わせて前向きにご検討いただくことはできませんでしょうか(ここで準備②の選択肢を提示する)」
このように、相手に「決定権」を委ねる形でボールを渡すことで、相手は「一方的に要求された」のではなく「共に解決策を考えた」と感じることができます。
【架空事例】呉市の食品加工会社・田中社長の交渉シミュレーション
※本事例は、読者の皆様の理解を深めるために、ワイズビズサポートナビが作成した架空のものです。
登場人物:
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田中社長: ペルソナ。呉市で佃煮や惣菜を製造する食品加工会社の二代目社長。
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山田部長: 地元スーパーのベテラン仕入れ担当者。先代社長とも付き合いが長い。
【交渉当日】
山田部長: 「おお、田中社長、久しぶりじゃのう。改まって、どうしたん?」
田中社長: 「山田部長、本日はお忙しい中、ありがとうございます。平素は格別のご高配を賜り、本当に感謝しております。先代の頃から、山田部長にはどれだけ助けていただいたか…」
山田部長: 「そんな、水臭いこと言うなや。で、相談ちゅうのは何じゃ?」
田中社長: 「はい。大変心苦しいのですが…。実は、主力商品の『〇〇の佃煮』の価格についてご相談があり、参りました。こちらをご覧ください(準備①の原価計算シートを提示)。」
山田部長: 「ほう、こりゃまた、ずいぶん細かい資料じゃのう…」
田中社長: 「ご覧の通り、主原料のイワシが昨今の不漁で30%も高騰しておりまして…。加えて、包装資材や配送のガソリン代も上がっており、今の価格のままでは、正直に申し上げて赤字なのです。私たちの力不足で、大変申し訳ありません」
山田部長: 「うーん、そうか…。どこも厳しいとは聞いとるが、お宅もか。しかしのう、うちも安売りが売りじゃけえ、簡単に『はい、そうですか』とは言えんのよ」
田中社長: 「おっしゃる通りです。重々承知しております。私たちが一番避けたいのは、コストを吸収するために、安い海外産の原料に切り替えるなどして、味が落ちてしまうことです。それは、先代から守ってきたタナカフーズの看板を汚すことになり、何より、長年ご愛顧いただいている山田部長やお客様を裏切ることになります」
山田部長: 「……。」
田中社長: 「そこで、無理を承知で、3つのプランをご提案させていただけないでしょうか(準備②の選択肢を提示)。プランAは、10%の値上げをお願いするもの。プランBは、5%の値上げで、年間契約をさせていただくもの。そしてプランCは…」
…この後、田中社長は誠心誠意、会社の状況と未来への想いを伝え、山田部長も会社の事情を理解。最終的にプランBで合意し、関係を壊すことなく値上げを成功させることができました。
【まとめ】値上げ交渉は、会社の未来と社員を守る社長の「責任」です
もう一度、この記事の要点を振り返ってみましょう。
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言い出せないブレーキの正体を知り、まずは自分自身の不安を解消する。
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交渉の成功は「数字の武器」という万全な準備で9割決まる。
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「お願い」ではなく「ご相談」という姿勢で、誠実に、未来志向で伝える。
社長、値上げ交渉は、決して「申し訳ないこと」ではありません。
それは、社員とその家族の生活を守り、会社の未来を創り、そして何より、お客様にこれからも質の高い製品・サービスを提供し続けるための、経営者として果たすべき、愛のある「責任」なのです。
この記事が、社長の重荷を少しでも軽くし、次の一歩を踏み出す勇気となれば、これほど嬉しいことはありません。
もし、「この記事の内容は分かったけど、自社だけで原価計算をするのは難しい」「第三者の専門家として交渉に同席してほしい」…そう感じられたら、いつでも私たちにご相談ください。
あなたは、決して一人ではありません。
筆者プロフィール
檜和田 知之(ひわだ ともゆき)
ワイズビズサポートナビ 代表
27年間にわたり、製造業・小売業など7業種の中小企業で経理部長・管理部長を歴任。「数字と現場をつなぐ」ことを信条に、数々の企業の資金繰り改善、業務効率化を実現してきた、中小企業の資金繰りのプロ。社長の孤独に寄り添い、共に未来を創る「もう一人の右腕」となることを使命としている。
値上げ交渉でお悩みの経営者様へ。当社の『もう一人の経理部長プラン』なら、そのお悩みを解決できます。まずはHPをご覧ください。
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