「また賃上げか…」と悩む中小企業社長へ送る5つの対策
2025/08/21
「また最低賃金の引上げか…」
テレビのニュースを見ながら、そう呟いた社長も多いのではないでしょうか。「売上は横ばいなのに、原材料費は上がる一方。そこに来て、人件費も上がるのか…」「うちのような町工場は、これ以上どうすりゃいいんだ…」
夜、静まり返った事務所で一人、パソコンの数字と睨めっこしながら、来月の支払いのことを考えて眠れない夜を過ごす。その孤独とプレッシャーは、経験した者にしか分かりません。
はじめまして。ワイズビズサポートナビ代表の檜和田知之と申します。
何を隠そう、私自身も27年間の経理部長時代、来る日も来る日も資金繰りに頭を悩ませ、人件費と利益の板挟みで苦しんだ経験があります。ですから、社長のそのお気持ち、痛いほどよく分かります。
しかし、多くの会社がこのピンチを乗り越え、より強くなってきたのも事実です。
実は、この最低賃金の引上げという避けられない変化は、会社の経営を根本から見直す絶好の「機会」なのです。例えるなら、会社の贅肉をそぎ落とし、筋肉質な経営体質へと生まれ変わるための「健康診断」のようなもの。
この記事では、元経理部長として数々の中小企業の現場を見てきた私が、最低賃金引上げの波を乗りこなし、むしろ会社を成長させるための具体的な「5つの対策」を、守りと攻めの両面から、現場の言葉で分かりやすくお話しします。
この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が「よし、明日からこれをやってみよう!」という具体的な行動に変わっているはずです。
【本編1】守りの対策①:全ての基本!自社の「お金」の流れを徹底的に見える化する
対策を打つ前に、まずやるべきことがあります。それは、自社の「本当の姿」を数字で正確に把握することです。いわゆる「どんぶり勘定」が、じわじわと会社の体力を奪っていきます。
多くの社長が「税理士から試算表は送られてくるけど、正直よく分からない…」とおっしゃいます。難しく考える必要はありません。見るべきは、会社の「健康診断書」である月次試算表と、「未来の天気図」である資金繰り表の2つです。
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月次試算表で何がわかる?
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先月、本当に儲かったのか?
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どの製品(工事)が稼いでいて、どれが赤字なのか?
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去年の同じ時期と比べて、業績は上向いているのか?
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資金繰り表で何がわかる?
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3ヶ月後、会社の現金はいくら残っているのか?
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大きな支払い(税金、ボーナスなど)は、いつ、いくら必要なのか?
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銀行から借り入れが必要なタイミングはいつか?
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これらを正確に把握することが、全ての対策のスタートラインです。その上で、聖域なきコスト削減に踏み込みましょう。
通信費や電気代、保険料の見直しはもちろんですが、私が経理部長として見てきた中で意外と見落とされがちなのが、**「社長、それ、本当に必要な経費ですか?」**という領域です。
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長年の付き合いで参加しているだけのゴルフコンペ
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未来の売上に繋がるとは思えない、夜の会合
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「念のため」で契約し続けているサブスクリプションサービス
一つ一つは小さくても、年間で見れば大きな金額になります。会社の「血」である現金を一滴でも多く残す。まずはそこから始めましょう。
《架空事例:固定費の見直しで年間50万円の現金創出!広島県福山市・金属加工業A社の事例》
税理士から送られてくる試算表を眺めるだけだったA社社長。顧問契約を機に資金繰りを徹底的に分析したところ、実は契約中の電力プランが工場の稼働実態に合っておらず、割高だったことが判明。さらに、長年付き合いで複数契約していた生命保険も、保障内容が重複しているものが見つかりました。
プラン変更と保険の見直しを実行しただけで、年間約50万円の固定費削減に成功。この資金を、従業員の賃上げ原資の一部と、新しい工具の購入に充てることができました。(実績がないため、これは架空の事例です)
【本編2】守りの対策②:知らないと損!国の「業務改善助成金」を120%活用する
「賃上げしたくても、原資がない…」そんな社長の悲痛な声に応えるため、国も様々な支援策を用意しています。その代表格が、厚生労働省の**「業務改善助成金」**です。
これは、要約すると「生産性を上げるための設備投資やコンサルティング導入などを行い、事業場内の最低賃金を引き上げた場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を国が助成しますよ」という、非常に使い勝手の良い制度です。
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対象となる経費の例
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生産性向上に繋がる機械設備の導入(例:新型のNC旋盤、自動梱包機)
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業務効率化のためのITツール導入(例:生産管理システム、勤怠管理ソフト)
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専門家による経営コンサルティング費用
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重要なのは、この助成金は「賃上げ」が前提となっている点です。つまり、国の支援を受けながら、生産性を向上させ、その結果として生まれた利益を従業員に還元するという、理想的なサイクルを生み出すきっかけになるのです。
ただし、申請すれば誰でも通るわけではありません。審査員を納得させる「事業計画書」が不可欠です。
私の見解ですが、補助金や助成金の採択で最も重要なのは、「この投資によって、我が社がどう変わり、どうやって利益を生み出し、従業員の給与に還元していくのか」という一貫したストーリーを、具体的な数字で示せるかどうかです。熱意だけでは、残念ながらお金は動きません。
《架空事例:助成金で最新CAD/CAM導入!生産性30%アップを実現した呉市・製造業B社の挑戦》
職人の手作業での図面作成とプログラミングに多くの時間を費やしていたB社。業務改善助成金を活用し、最新のCAD/CAMシステムを導入することを決意。事業計画書では、システム導入によって設計時間がどれだけ短縮され、受注可能な案件数がどう増えるのかを具体的にシミュレーションして提示しました。
結果、無事に助成金は採択。ベテラン職人の経験と若手のPCスキルが融合し、生産性は30%向上。そこで生まれた利益で全社員の賃上げを実現し、今ではこれまで挑戦できなかった高付加価値な案件にも取り組めるようになりました。(実績がないため、これは架空の事例です)
【本編3】攻めの対策③:「社長、まだ一人で経理やってるんですか?」IT導入で生産性を劇的に向上させる
人手不足が深刻化する現代において、今いる人員でより多くの利益を生み出す「生産性向上」は、企業の至上命題です。そして、その最大の鍵を握るのがITの活用、特にバックオフィス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
「うちはアナログな業界だから…」
「パソコンは苦手で…」
そうおっしゃる社長、お気持ちは分かります。しかし、私が経理部長だった20数年前、月末は事務所に泊まり込みで大量の伝票を手で入力していました。それが今や、freee(フリー)のようなクラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードを連携させるだけで、多くの取引が自動で帳簿に記録されます。請求書の発行も、スマホ一つでできてしまう時代です。
クラウド会計を導入するメリットは計り知れません。
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経理作業の時間が劇的に減る(請求書作成、記帳、入金確認など)
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リアルタイムで経営状況を把握できる(スマホでいつでも売上や利益が確認可能)
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銀行からの信頼度が上がる(透明性の高い会計データは融資審査で有利に)
経理担当者を一人雇用すれば、給与や社会保険料で月に30万円以上かかります。クラウド会計なら、その数十分の一のコストで、24時間365日働く優秀な経理部長を雇うようなものです。
どうか、IT導入を「コスト」ではなく「未来への投資」と考えてください。そして、そこで生まれた貴重な時間を、社長にしかできない**「会社の未来を創る仕事」**に使っていただきたいのです。
《架空事例:請求書作成が3日から半日に!クラウド会計導入で社長の時間を取り戻した東広島市・建設業C社の改革》
毎月末、現場仕事で疲れた体で事務所に戻り、深夜まで請求書作成と入金確認に追われていたC社の社長。まさに「社長兼現場監督兼経理部長」の状態でした。
思い切ってクラウド会計を導入したところ、これまで3日かかっていた請求・入金管理業務が半日で終わるように。社長は生まれた時間で、新規顧客への営業や、若手従業員の技術指導に注力できるようになり、結果的に会社の売上は前年比120%を達成しました。(実績がないため、これは架空の事例です)
【本編4】攻めの対策④:「ウチは安さが売りだから…」はもう卒業!勇気ある価格転嫁の進め方
「原材料も人件費も上がっている。本当は値上げしたい。でも、そんなことをしたらお客さんが離れてしまう…」
技術力に自信があり、真面目な社長ほど、この「価格交渉」に苦手意識を持っています。「良いものを作っていれば、いつか分かってもらえるはずだ」と。しかし、その“価値”は、言葉にして伝えなければ伝わりません。
最低賃金引上げは、自社の製品やサービスの価格を真剣に見直す、またとない機会です。
価格転嫁を成功させる鍵は、交渉の場に立つ前の「準備」にあります。準備が9割と言っても過言ではありません。
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自社の提供価値の言語化
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他社にはない、自社の強みは何ですか?(技術力?短納期?品質の安定性?)
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その強みは、お客様のビジネスにどんな貢献をしていますか?(「御社の不良品率を5%下げています」「当社の部品があるから、御社は〇〇という性能を謳えるのです」など)
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顧客ごとの利益率の把握
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実は、取引額は大きくても、手間がかかりすぎて利益がほとんど出ていないお客様がいませんか?
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全てのお客様に一律で値上げをお願いする必要はありません。優先順位をつけるのです。
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説得力のある資料の作成
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原材料費や公的な最低賃金の上昇率など、客観的なデータを提示する。
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その上で、自社がお客様に提供している価値を改めて説明し、価格改定への理解を求める。
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これは「お願い」ではありません。お客様と、これからも良い関係でビジネスを続けていくための、対等なパートナーとしての「交渉」です。勇気を持って、その一歩を踏み出しましょう。
《架空事例:「あなたから買いたい」と言わせた!自社の強みを武器に5%の値上げに成功した広島市・卸売業D社の交渉術》
長年の取引先から、厳しいコストダウン要求に悩まされ続けていたD社。「安くないと取引を切られる」という恐怖心から、赤字ギリギリの価格で納品していました。
転機は、自社の強みをデータで分析したことでした。D社の「欠品率の低さ(99.9%)」と「緊急時の迅速な対応力」が、実は取引先の生産ラインを一度も止めたことがない、という絶大な貢献をしている事実を突き止めました。
交渉の場でその客観的データを提示し、「この品質と安定供給を維持し、今後もパートナーであり続けるために、今回の価格改定が必要です」と丁寧に説明。結果、取引先から「確かにそうだ。これからも頼むよ」という言葉と共に、5%の価格アップを勝ち取ることができました。(実績がないため、これは架空の事例です)
【本編5】未来への投資⑤:「給料だけ上げても社員は辞める」人事評価制度の見直しと人材育成
最後の対策は、会社の未来を創る「人」への投資です。
「給料を上げれば、社員は喜んで定着してくれるだろう」
そう考えるのは、半分正解で、半分間違いです。もちろん、賃金は重要です。しかし、それ以上に社員が見ているのは「この会社は、自分の頑張りを正当に評価してくれるか?」という点です。
もし、頑張っている社員と、そうでない社員の給料が同じだったらどうでしょう?真面目な社員ほど「バカバカしい」と感じ、モチベーションを失い、やがては会社を去ってしまいます。
最低賃金引上げを機に、ぜひ「人事評価制度」の導入、あるいは見直しを検討してください。
難しく考える必要はありません。最初は、「社長が社員一人ひとりに、何を期待しているか」を明確に伝えることから始めれば良いのです。
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技術の習熟度
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後輩への指導
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業務改善への貢献
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チームワーク
このような項目を作り、「これができれば給料が上がるんだ」という、分かりやすい道筋を示してあげる。それだけで、社員の目の色が変わる会社を、私はたくさん見てきました。
そして、その成長を支援するための人材育成(資格取得の補助など)も積極的に行いましょう。社員のスキルアップは、会社の生産性向上に直接繋がります。それは、どんな最新設備にも勝る、最高の「未来への投資」なのです。
《架空事例:ベテランの技術が若手に継承!評価制度の見直しで離職率が半減した福山市・町工場E社の組織変革》
「見て覚えろ」という昔ながらの気質が根強く、若手が育たずにすぐ辞めてしまうことに悩んでいたE社。賃上げを機に、「若手への技術指導」をベテラン社員の評価項目として新設しました。
最初は戸惑っていたベテラン勢も、教えることで自分の給与に反映されると知り、積極的に若手に声をかけるように。社内のコミュニケーションが活性化し、若手の定着率が劇的に改善。結果として、組織全体の技術力が底上げされるという、素晴らしい好循環が生まれました。(実績がないため、これは架空の事例です)
【まとめ】社長、その戦いは一人ではありません
ここまで、最低賃金引上げというピンチを乗り越えるための5つの対策についてお話ししてきました。
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守りの対策①:お金の流れを見える化し、聖域なきコスト削減を行う
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守りの対策②:国の「業務改善助成金」を賢く活用する
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攻めの対策③:ITを導入し、バックオフィスの生産性を劇的に向上させる
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攻めの対策④:自社の価値を武器に、勇気ある価格転嫁を実行する
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未来への投資⑤:人事評価制度を見直し、社員の成長を会社の成長に繋げる
「やることが多すぎる…」と感じたかもしれません。ご安心ください。これら全てを、明日から一度にやる必要はありません。まずは「これなら、うちでもできそうだ」と思うものを一つ、始めてみませんか?
電気料金のプランを見直してみる。業務改善助成金のサイトを覗いてみる。クラウド会計の資料を取り寄せてみる。その小さな一歩が、会社の未来を大きく変えるきっかけになります。
最低賃金引上げは、すべての企業に課せられた、避けては通れない経営課題です。しかし、見方を変えれば、会社の膿を出し、本気で未来を考えるための「号砲」とも言えます。
社長は孤独です。しかし、決して一人ではありません。あなたの会社の数字と現場を深く理解し、その挑戦に寄り添い、共に汗を流すパートナーがいます。
この厳しい時代を、共に乗り越えていきましょう。
資金繰りでお悩みの経営者様へ。当社の『もう一人の経理部長プラン』なら、そのお悩みを解決できます。まずはHPをご覧ください
筆者プロフィール
檜和田 知之(ひわだ ともゆき)
ワイズビズサポートナビ代表。日新製糖株式会社や複数の中小企業で計27年間、経理部長・管理部長を歴任。1111現場に入り込み、年間200万円以上のコスト削減や、月65時間の作業時間短縮などを実現してきた、中小企業の資金繰りと業務改善のプロ。 机上の空論ではなく、現場の言葉で社長の孤独に寄り添い、会社の「第二創業」を伴走支援することを信条としている。
【出典元】
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厚生労働省「業務改善助成金」
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中小企業庁「価格交渉サポート」
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