株式譲渡の税金は最大45%!社長が知るべき3つの節税術
2025/08/18
はじめに:株式譲渡の税金、本当にご存知ですか?
「株式を売却したら、税金はいくらかかるんだろう...」
この質問、実は私が27年間の経理人生で、経営者の方から最も多く受けてきた質問の一つです。
特に最近は、後継者不足や事業承継の問題から、M&Aや株式譲渡を検討される中小企業の社長様が増えています。でも、いざ具体的な話が進み始めると、予想外の税金額に驚かれる方がほとんどなんです。
「えっ、そんなに税金がかかるの?」 「手元に残るお金が思ったより少ない...」 「これじゃあ、老後の資金が足りなくなる」
こんな声を何度聞いたことでしょうか。
実は、株式譲渡にかかる税金は、最大で譲渡益の45.945%にも達することがあります。つまり、1億円の譲渡益があっても、手元に残るのは約5,400万円。半分近くが税金として消えてしまうんです。
でも、ご安心ください。
適切な節税対策を行えば、この税負担を大幅に軽減することができます。私がこれまで数多くの経営者様とお付き合いしてきた経験から、実践的で効果的な節税術をお伝えしていきます。
株式譲渡税の基本と衝撃の実態
上場株式と非上場株式で天と地の差
まず、押さえておきたいのが、株式譲渡税は「上場株式」と「非上場株式」で税率が全く違うということです。
上場株式の場合:
- 所得税:15.315%(復興特別所得税含む)
- 住民税:5%
- 合計:20.315%(一律)
これは分離課税といって、他の所得とは別に計算されます。1億円の譲渡益でも、1,000万円の譲渡益でも、税率は同じ20.315%です。
非上場株式の場合: これが問題なんです。非上場株式、つまり中小企業の社長様が持っている自社株の場合、原則として「総合課税」となります。
給与所得や不動産所得など、他の所得と合算して税率が決まるため、所得が多いほど税率が上がる仕組みです。
所得税の税率を見てみましょう:
- 195万円以下:5%
- 195万円超~330万円以下:10%
- 330万円超~695万円以下:20%
- 695万円超~900万円以下:23%
- 900万円超~1,800万円以下:33%
- 1,800万円超~4,000万円以下:40%
- 4,000万円超:45%
これに住民税10%が加わるため、最大で55%もの税率になる可能性があるんです。
実際の計算例:A社長のケース
私が以前ご相談を受けた事例を基に、架空の事例として説明します(実際の事例は守秘義務があるため、数字は変更しています)。
A社長(65歳)の状況:
- 自社株式の譲渡価格:5,000万円
- 取得価格:500万円(30年前に設立)
- 譲渡益:4,500万円
- その年の役員報酬:1,000万円
この場合の税金計算:
- 総所得金額:5,500万円(譲渡益4,500万円+役員報酬1,000万円)
- 所得税:約1,800万円
- 住民税:約550万円
- 合計税額:約2,350万円
譲渡益4,500万円に対して、税金が2,350万円。実効税率は約52%にもなります。
「半分以上が税金で持っていかれるなんて...」
A社長はそう言って、肩を落とされていました。でも、この後お話しする節税対策を活用することで、最終的には税額を1,000万円以上減らすことができたんです。
なぜこんなに税金が高いのか
私も最初は「なんでこんなに税金が高いんだろう」と疑問に思っていました。
でも、税務署の立場から考えると、株式譲渡益は「不労所得」として見られているんですね。汗水流して働いて得た給与所得とは違い、資産の値上がりによる利益だから、高い税率を課すという考え方です。
特に非上場株式の場合、その会社の成長は経営者の努力の賜物でもありますが、従業員の頑張りや取引先の協力、さらには社会インフラの恩恵も受けています。だから、その利益の一部を税金として社会に還元するという理屈です。
理屈は分かりますが、それでも経営者としては「もう少し何とかならないか」と思いますよね。
知らないと損する3つの節税術
節税術1:事業承継税制の活用
これは本当に強力な節税策です。正直、知っているか知らないかで、数千万円の差が出ることもあります。
事業承継税制とは、後継者に株式を承継する際の贈与税・相続税を猶予・免除する制度です。2018年から特例措置が始まり、2024年3月末まで延長されていましたが、現在も一般措置は継続しています。
架空事例:B社の後継者への株式譲渡
B社長(68歳)は、息子(40歳)に会社を継がせることにしました。
- 自社株の評価額:3億円
- 通常の贈与税:約1億4,000万円
しかし、事業承継税制を活用すると:
- 贈与税:0円(全額猶予)
- 条件:後継者が5年間代表者として経営を継続
ただし、注意点があります:
- 事前に「特例承継計画」の提出が必要
- 後継者が途中で株式を売却すると猶予取消
- 雇用維持要件(緩和されましたが注意は必要)
私の経験上、この制度を使う際は、必ず税理士と相談しながら進めることをお勧めします。手続きが複雑で、一つでもミスがあると猶予が取り消される可能性があるからです。
節税術2:退職金との組み合わせ戦略
これは私が最もお勧めする方法の一つです。なぜなら、退職金は税制上とても優遇されているからです。
退職所得の計算式: (退職金-退職所得控除)×1/2
退職所得控除は勤続年数によって変わります:
- 勤続20年以下:40万円×勤続年数
- 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
架空事例:C社長の引退プラン
C社長(70歳、勤続40年)の場合:
- 退職所得控除:800万円+70万円×20年=2,200万円
- 退職金5,000万円を受け取った場合の課税対象:(5,000万円-2,200万円)×1/2=1,400万円
株式譲渡価格を下げて、その分を退職金で受け取ることで、トータルの税負担を大幅に減らせます。
私がアドバイスした実際のケース(数字は変更)では:
- 当初プラン:株式譲渡8,000万円→税金約2,400万円
- 変更後:株式譲渡4,000万円+退職金4,000万円→税金合計約1,200万円
なんと1,200万円もの節税効果がありました!
節税術3:分離課税の選択と申告タイミング
実は、非上場株式でも一定の条件を満たせば、分離課税(税率20.315%)を選択できる場合があります。
分離課税が選択できるケース:
- 相続や贈与で取得した株式
- 従業員持株会を通じて取得した株式
- ストックオプションで取得した株式(特定の要件あり)
架空事例:D社の段階的譲渡
D社長は保有株式を3年かけて段階的に譲渡しました:
- 1年目:1,500万円分譲渡(他の所得と合算しても低税率区分)
- 2年目:1,500万円分譲渡
- 3年目:2,000万円分譲渡
一度に5,000万円譲渡すると最高税率が適用されますが、分散することで税率を抑えることができました。
また、譲渡のタイミングも重要です。例えば:
- 役員退任後の所得が少ない年に譲渡
- 大きな損失が出た年に譲渡して損益通算
- 配当所得が少ない年を狙う
これらの工夫で、実効税率を10%以上下げることも可能です。
税金支払いで資金繰りを悪化させない方法
納税で会社が倒産?意外と多い落とし穴
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがありますか?利益は出ているのに、現金が足りなくて倒産してしまうことです。
実は、株式譲渡後の納税でも同じようなことが起こり得ます。
架空事例:E社が納税資金不足で陥った危機
E社長は自社株を2億円で譲渡しました。「これで老後は安心だ」と思っていたのですが...
- 譲渡代金の使い道:新事業への投資1億円、自宅のリフォーム3,000万円、子供への贈与3,000万円
- 残金:4,000万円
- 翌年3月の確定申告で判明した税額:6,000万円
「えっ、2,000万円も足りない!」
慌てて銀行に融資を申し込みましたが、「譲渡益への課税資金」という理由では融資が下りず、結局、運転資金から捻出することになり、会社の資金繰りが一気に悪化しました。
納税スケジュールを把握する
株式譲渡にかかる税金の支払いスケジュールをしっかり把握しておくことが大切です。
所得税の納税スケジュール:
- 譲渡した年の翌年2月16日~3月15日:確定申告
- 3月15日まで:所得税納付期限
- 予定納税がある場合:7月と11月に前払い
住民税の納税スケジュール:
- 譲渡した年の翌年6月:納税通知書が届く
- 6月、8月、10月、翌年1月:4回に分けて納付(一括納付も可)
つまり、株式を譲渡してから実際に税金を払い終えるまで、最長で2年近くかかることもあるんです。
資金計画の立て方
私がいつも経営者の方にお伝えしているのは、「譲渡代金の使い道は税金を差し引いてから考える」ということです。
資金計画のステップ:
-
税額のシミュレーション 譲渡前に必ず税理士に相談して、正確な税額を計算してもらいます。
-
納税準備金の確保 譲渡代金が入金されたら、まず税額分を別口座に移します。これには手を付けません。
-
余剰資金の活用計画 税金を差し引いた残額で、使い道を計画します。
-
予備資金の確保 想定外の追徴課税に備えて、税額の10%程度は予備として残しておきます。
金融機関との事前交渉
もし納税資金が不足しそうな場合は、早めに金融機関と相談することが大切です。
交渉のポイント:
- 株式譲渡契約書を持参して、確実に資金が入ることを説明
- 納税額の試算書を提示
- 返済計画を明確に示す
- 可能であれば、譲渡代金の一部を担保として提供
私の経験では、事前にきちんと相談すれば、多くの金融機関が納税資金の融資に応じてくれます。ただし、納付期限ギリギリになってからでは間に合わないので、遅くとも確定申告の2ヶ月前には相談を始めることをお勧めします。
よくある失敗例と対処法
みなし配当課税の落とし穴
これは本当によくあるミスです。私も若い頃、この制度を知らずにお客様に迷惑をかけそうになったことがあります。
架空事例:みなし配当課税を見落としたF社
F社長は、自社に自己株式を買い取ってもらう形で株式を譲渡しました。
- 買取価格:5,000万円
- 資本金等相当額:1,000万円
- みなし配当:4,000万円
F社長は「株式譲渡所得として20.315%の税率」と思っていましたが、実際は「みなし配当」として総合課税の対象となり、最大55%の税率が適用されてしまいました。
対処法:
- 自社株買いの場合は、必ず事前に税理士に相談
- 可能であれば、第三者への譲渡を検討
- やむを得ない場合は、買取価格の調整を検討
株価算定ミスによる追徴課税
非上場株式の評価は非常に複雑で、間違いやすいポイントです。
架空事例:株価算定ミスで追徴課税を受けたG社
G社長は、簡易的な方法で株価を算定し、1株1万円として譲渡しました。しかし、税務調査で「適正価格は1株2万円」と指摘され、差額分について贈与税が課されました。
- 当初の譲渡価格:1億円(1万円×1万株)
- 適正価格:2億円(2万円×1万株)
- 低額譲渡として贈与税の対象:1億円
- 追徴税額:約4,000万円
対処法:
- 必ず専門家による株価算定を実施
- 類似業種比準価額、純資産価額、配当還元価額を比較検討
- 税務署への事前照会も検討
特定口座を使わなかった失敗
上場株式の場合の話ですが、これも意外と多いミスです。
特定口座(源泉徴収あり)を使えば、証券会社が税金を天引きしてくれるので確定申告が不要です。しかし、一般口座で取引してしまうと、自分で確定申告する必要があります。
申告漏れは、無申告加算税や延滞税の対象となります。私の知り合いの経営者も、「上場株式の売却益500万円を申告し忘れて、3年後の税務調査で100万円以上の追徴を受けた」という苦い経験があります。
まとめ:今すぐ始めるべき3つのアクション
ここまで、株式譲渡にかかる税金と節税対策について詳しく見てきました。
「なんだか複雑で頭が痛くなってきた...」
そう感じられた方も多いかもしれません。でも、大丈夫です。以下の3つのアクションから始めれば、必ず道は開けます。
アクション1:現状の株価を把握する
まずは、今の自社株の価値がいくらなのかを把握しましょう。これがすべての出発点です。顧問税理士に相談すれば、概算額はすぐに教えてもらえるはずです。
アクション2:譲渡時期と方法を検討する
いつ、誰に、どのような方法で譲渡するのか。これによって税額は大きく変わります。複数のシナリオを検討して、最適な方法を選びましょう。
アクション3:専門家チームを作る
株式譲渡は、税務だけでなく、法務、財務、経営戦略など、多岐にわたる専門知識が必要です。信頼できる税理士、弁護士、M&Aアドバイザーなどでチームを作ることが成功の鍵です。
私自身、27年間の経理・財務の経験の中で、数多くの株式譲渡案件に携わってきました。その中で確信したのは、「準備期間が長いほど、節税効果が高い」ということです。
今日から準備を始めれば、1年後、3年後、5年後の株式譲渡時には、大きな差となって現れます。
「でも、誰に相談すればいいのか分からない」 「今の顧問税理士は株式譲渡に詳しくなさそう」 「トータルでサポートしてくれる専門家が欲しい」
そんな悩みをお持ちの経営者様も多いのではないでしょうか。
株式譲渡でお悩みの経営者様へ。当社の『もう一人の経理部長プラン』なら、そのお悩みを解決できます。まずはHPをご覧ください。
筆者プロフィール 檜和田知之(ひわだ ともゆき) ワイズビズサポートナビ 代表 27年間の経理・業務改善経験を持つ、中小企業の資金繰りのプロ
大手企業から中小企業まで、幅広い規模の会社で経理部長・CFOを歴任。特に中小企業の資金繰り改善と節税対策を得意とし、これまでに100社以上の企業の財務改善を支援。「経営者に寄り添う、もう一人の経理部長」として、実務的で分かりやすいアドバイスに定評がある。
出典元
- 国税庁「株式等の譲渡所得等の申告のしかた」
- 国税庁「事業承継税制特集」
- 中小企業庁「事業承継ガイドライン」(2022年3月改訂版)
- 金融庁「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」
- 日本証券業協会「個人投資家の証券投資に関する意識調査」
- 東京商工リサーチ「後継者不在率調査」(2024年版)
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